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『サクリファイス』『エデン』を読んで その4

さて、『エデン』の表紙に惹かれて、のその前作の『サクリファイス』である。期待しないわけがない。”本屋大賞”なぞの煽り文句に興味はないが、サイクルロードレースが物語の舞台とあってはワタシの期待は高まるばかりであった。それが外れたときどれほど落胆するかも明らかだったが。

通算数時間で読み終えた。嗚呼!面白かった!おい相方よ、仕事の帰りに『エデン』買ってきてちょーだい、と命じた、いった感じだ。

中編といったボリュームで、あっという間に読み終えた。文章は極めて簡潔。青春ものである。そこにミステリというかサスペンスの要素が含まれているが、正直それはどうでもよろしい。はっきり言ってミステリとしてはつまらない。なんだか無理矢理その要素が盛り込まれている印象。しかしながらこの作家はミステリ作家らしく、申し訳ないがワタシはまったく他の作品は読んだことがないのでどうとも言いようがないが、『サクリファイス』に関してミステリ的要素はつまらなかった、というよりどうでもよかったのである。

ロードレースに関する記述や描写は初心者にとても親切で、かつ臨場感があった。実際のロードバイク乗りの人がどう感じるかはワタシにはわからない。こちとらママチャリ乗りにすぎないのだ。しかしロードレースというものへの丁寧かつ簡潔な説明と緊張感のある描写をワタシはとても楽しめた。

ミステリとしての人物の配置やキャラクタ設定はとてもステレオタイプに感じた。かつての恋人との再会や主人公が尊敬するエースへの疑惑の掛け方など、2時間ドラマ的なノリにしか感じられなかった。
袴田という登場人物なぞ2時間ドラマだったらあの役者だろ?と思うくらいにステレオタイプすぎる。主人公のチカの初恋の人でありかつての恋人だった香乃はただの自己陶酔女系にしか感じられない。このキャラクタが魅力的に感じる人とはたぶんワタシは口論になる。全然魅力的な女性に感じられない。
疑惑のエースが実は物凄く思慮深くて日本のロードレーサーの成長のためにあらゆる犠牲も厭わないほどの覚悟がある、といった描写もじわじわと読者に訴えかけるものでなく、土壇場でバタバタと説明されているにすぎないように感じられる。もしミステリとしてサスペンスとして読者を揺さぶりたかったのならば、かつての恋人と尊敬するエースとその因縁深き元選手のキャラクタ付けと描写は、もっとどうにかしようがあったと思う。謎解き部分もとってつけたように感じ、無理矢理の強引さしか感じられない。もしミステリ小説またはサスペンス小説として期待して読むならそれは止めた方がいいと思う。

これは青春小説だとワタシは思う。これはスポーツ青春小説だ。
ワタシはこの作家がどういった人であるかまったく知らなかった。あえて一切余分な情報を取り入れなかった。しかしながらどうしても目に入るので文庫版の表紙折り返し部分の作家紹介に目を通すと、ミステリ小説を書いている作家であることは間違いないだろう。その方向のこの作家にワタシの興味は今のところ申し訳ないが向いていない。ところが結構な青春小説作家であるのでないか、と思うのである。この読後の清涼感は作家のもたらした力量である。

さて、ワタシがこれまでに述べたことは否定的な要素が多いかと思う。しかしながらワタシはこの小説をとても面白いと感じたのだ。それは主人公チカのロードレースにおけるアシストとしての自分の立場や覚悟を描写している点である。「勝利」に関する捉え方は少々屈折しているようだが彼自身は結局眩しいほどに真っ直ぐな心根の持ち主である。アシストという役割に直感的に生き甲斐を感じる主人公にワタシはたまらなく魅力を感じた。
ロードレースを観るようになって日がまだ浅いワタシではあるが、エースの勝利の影にアシストの懸命な働きがあってこそ、という場面を観るからだと思う。ロードバイク乗りの人がどう読むかはワタシには未知数である。しかし当たり前のことであるが実力の世界でありキャリアがものを言う世界であることは一目瞭然である。展開のアヤは所詮偶然なのだ。必然と偶然と対価の交錯する世界のようではないか。




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ツモ

Author:ツモ
30代後半女。
→四十路突入。
→もうすぐバカボンのパパ越え。
→日本女性の平均寿命に向かって折り返し地点あたり。別にそこまで長く生きたいわけでもない。とりあえずの目標はこの先20年くらい。

暴れまわった娘時代の反動か、自宅にひきこもりがち。相方、娘二人と古都の端っこで地味に暮している。


気まぐれにしか更新しないくせに、記事がやたらと長くなる傾向にある。

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