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「櫻の園」吉田秋生

春は桜。
もうすっかり葉桜ですが、やはりこんな季節に読みたくなるのがこれ。

高校生という微妙な年頃の女の子のさほど特別ではないけれど本人たちにとっては大きく心が揺れる出来事がさらりと描かれています。ここで描かれている女子高生たちは古き佳き時代の姿です。ワタクシのような年代にはどこか甘く切ない。

ワタクシが通った高校は校則や制服規定がかなりゆるかったのでそれぞれ思い思いの髪型に持ち物で学校生活が送れ、当時はそれが嬉しくもありました。通学途中に見かける服装規定の厳しそうな他校の女の子たちの姿が気の毒に見えたこともありました。長い髪はきっちり三つ編みに結いスカート丈は少々野暮ったく見える長さで真っ白の三つ折ソックス、私立の女子高に通う女の子は大体がそういったスタイルで、当人たちもそれをとてもつまらない規則だと感じていたであろうと思うのです。
そういった格好は近頃はもうほとんど見かけることがなくなり、ふとかつての女子高生の姿が懐かしく清く思い出されるようになったのはきっとワタクシが歳をとった証拠だと思います。が、しかしその厳しく定められた一様のスタイルにその年齢にしか成り立たなかった美しさがあったのではないかとこの頃は感じます。スカートの中が今にも見えそうなほどの短い丈の女子高生ばかり見かける昨今、パンツは見えないからこそいいものなんだぞ、とかなりオヤジ的感覚すら覚えるのです。

イマドキの女子高生の生態がマスコミが騒ぎ立てるものが大半とは思いませんが、携帯電話の申し子のような彼女たちにはかつての時代の純情というものがたぶんピンとはこないのではないでしょうか。
どこか気になっている男の子の家になにか用件を無理に作って電話をかけようとするけれど、もし家族の人が電話に出たら、とか上手く話ができるか、とかいうドキドキ感は携帯電話では味わえないものです。
確かに現在でも携帯電話の番号やメールアドレスを知るためにきっかけを作ったり声をかけたりするドキドキ感はあるのだろうけれど、知ることができればその後の交渉は楽に対面でできるようになりますよね。かつてはとにかく直接声をかける以外に有効な手段はなかったのですから。
しかしコミュニケーションを深める手段がメールというのはいささか安直というか、むしろ逆に本音が見えにくくなるような気もします。若い人々が肌身離さず携帯電話を操る姿に違和感を感じてしまう、ワタクシも結構旧世代の人間なのでしょうけれど。

ところでこの作品は映画化もされていますが実はワタクシはこの映画の方ももかなり好きでして。なんともファンタジーとも言える女子高生の描き方にはまったクチです。
しかし映画で若干首を傾げた点がありまして、女の子が女の子へ淡い恋心みたいなものを持つという描き方が女である自分から見て、なんか違うよなー、と思いました。
原作でも表向きそういった表現はあるのですがそれは恋とかそういうものではないと思います。「好き」という言葉がすべて恋に値するわけではありませんものね。それは自己の存在確認とか存在肯定みたいなものではないでしょうか。
若き時代、自分への嫌悪感に苛まれたりした経験って結構みんなあると思うのですけど、他者に「好き」と言ってもらえることで救われたり、「好き」と告げることができたことそのこと自体がが自分を救ったり。恋ではなくて、自分のことを「好き」と言ってくれる友人がいることがどれだけ素晴らしいことか。それは自分という存在を真正面から肯定してくれていることに他ならないのですから。また、好きなものを素直に「好き」と言える勇気を持つことは自己の確立でもあるのではないかと思います。

思春期から青年期に差し掛かる頃、そこまでの経験も知識もないのにむやみに難しく物事を考えてしまったり周囲と上手くやろうとするあまりに自分の思いを無駄に押し殺したり逆に自分を押し通そうとし過ぎて周囲の雰囲気が見えなくなってしまったりと不器用なことばかりを繰り返したものですが、ああいったことも若いからこそのプロセスだったと思うのです。もう自分には二度と帰ってこない時代だと思うと少し寂しいような気もします。
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Comment

みやこ | URL | 2008.05.02 14:14
姉の本棚から盗み読みした本のひとつです。
この作者のお話は、いつもすぐそこにあるような、でもちょっと高いところにもいるような、独特の感性があるような気がします。
この櫻の園に出てくる、男の子や女の子たちの身の回りに起こる出来事が、当時のわたしにとってはちょっと背伸びした大人の世界で、とにかく心の底からドキドキして読んでました。たしか初体験のシーンなんかも、すごくありがちで、ドキドキ感が増しましたね(笑
ツモ | URL | 2008.05.13 17:02
みやこさん

「盗み読み」というところがまたドキドキ感5割増しって感じですよね。
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いらっしゃいませ。

ツモ

Author:ツモ
30代後半女。
→四十路突入。
→もうすぐバカボンのパパ越え。
→日本女性の平均寿命に向かって折り返し地点あたり。別にそこまで長く生きたいわけでもない。とりあえずの目標はこの先20年くらい。

暴れまわった娘時代の反動か、自宅にひきこもりがち。相方、娘二人と古都の端っこで地味に暮している。


気まぐれにしか更新しないくせに、記事がやたらと長くなる傾向にある。

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