スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

特別すぎた娘 その2

映画版のヒロインは正しさと清さを全面に押し出した像だった。ヒロインの苦難と悲しみはそれらに後押しされた一面性のもので、キャラクタを把握しやすく主人公の立場を大変わかりやすく格付けたものだったと思う。その対照として、大変わかりやすい悪の面を見せたのがクシャナである。
原作マンガにおける彼女たちはキャラクタに多面性を見せる。
ナウシカは正しくあるが直情的でもあり、清さの影にエゴイズムも見える。クシャナは冷酷さの裏に繊細さと孤独を見せる。主人公はナウシカであるが、描写される量に差はあれどクシャナもまた重要なヒロインであろう。
ヒロインたちは戦争という不吉な影に晒されている。ヒロインたちに平安は容易くは許されない。ヒロインたちはそれぞれに影を纏う。

ナウシカはトルメキア第4皇女クシャナ率いる土鬼辺境制圧軍に加わる。
拒否できない政治的理由によるものだ。次期族長として単純に正義を謳える立場でなく国の利益のための計略と打算を要する立場である。ナウシカが根本的には平和を愛する娘であることに間違いはない。出撃要請に応えるのは国の自治権を維持するため、いわば国の防衛のためである。
しかしこれは詭弁である。

トルメキア国王家内にそもそも権力争いの欲望と陰謀の火種がある。正当な王位継承権を有しカリスマ性のある第4皇女クシャナは兄皇子たちと父国王からも疎まれ戦乱に紛れ殺害せんと狙われている。クシャナはクーデターの機会を密かに狙いながら進軍していたが、土鬼に裏でクシャナ進軍の情報を流す兄皇子たちの姦計に陥る。ナウシカも否応無く巻き込まれ、戦争の現実と人間の醜い欲と愚かしさを見せ付けられることになる。

現実は伝聞と想像を遥かに超える。その渦中に足を踏み入れ自分の目で見るまでは本当の意味では理解していなかっただろうナウシカは、風の谷の次期族長としての責任と重圧を背負いつつも、厳しく慎ましくとも安息と小さな幸せも与えられていた少女でもあったのだ。

かねてより腐海が瘴気を吐き出す原因が汚染された土にあることに気付き、蟲と心を通わすこともできるナウシカは、それらが人類の業苦であれ敵ではないことを知っている。人類の領分をわきまえれば共生する道を模索できるはずだ、と信じていた。しかし人間の愚かしい争いは止まず、自分も立場と盟約ゆえにそれに加わざるを得なかったが、もしも戦争の現実を目の当たりにしていなければナウシカが人類が自ずと破滅に向かおうとしてしまっている流れを認識することはなかっただろう。皮肉な話である。
ナウシカは戦乱の中で王蟲との心の交流により大海嘯を予感し、戦列を離れ世界の行く先を見極めようとひとりで旅立った。

「お前はお前の道をいくがいい、それも小気味よい生き方だ。私は私の血みどろの道をいく」

クシャナの言葉である。


(続きます)



スポンサーサイト

Comment

Comment Form
公開設定

いらっしゃいませ。

ツモ

Author:ツモ
30代後半女。
→四十路突入。
→もうすぐバカボンのパパ越え。
→日本女性の平均寿命に向かって折り返し地点あたり。別にそこまで長く生きたいわけでもない。とりあえずの目標はこの先20年くらい。

暴れまわった娘時代の反動か、自宅にひきこもりがち。相方、娘二人と古都の端っこで地味に暮している。


気まぐれにしか更新しないくせに、記事がやたらと長くなる傾向にある。

カテゴリー
最近の記事
月別アーカイブ
06  05  03  02  01  12  11  10  09  08  07  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02 
最近のコメント
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
本・雑誌
1056位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
601位
アクセスランキングを見る>>
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

リンク
ブログ内検索
RSSフィード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。