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特別すぎた娘 その4

クシャナは大義のない戦争という愚行を執る王家とその取巻きを憎みクーデターを狙っている。自分の育成した軍の多くは作戦の名の下にクシャナの手から引き離され死地に追い遣られている。自身も姦計に陥り多くの兵を失い、それでもまだ己を慕い待つ軍の救出と獲得に向かい進み続けた、自分の下で再び兵を集め挙げ国に帰り愚者たちに一矢報いるためだけに。しかし大海嘯による蟲の大群の暴走に巻き込まれ瘴気の中に遭難する。
攻撃的に暴走する蟲に膨大な人間の命は散っていく。地獄絵図の中でクシャナは自然と解脱するかのように思考が洗練されていく。愚行を繰り返す人類の正道に向かうべき糸筋を見つめ始めるのだ。

ナウシカは大海嘯によって自身の感情を処理仕切れなくなり歩みを止めた。クシャナは大海嘯によって自身の感情を越え、時代の動く先の必要なものを見極める目を持ち始めた。


「虚無」の奈落に落ちた精神世界で、ナウシカは失墜した己の魂を悲しみ励ます、己が捨てた世界にあるものたちの声を聞く。大海嘯の広がろうとする土鬼の一地方で土着の信仰を守る僻地に至った時、即身仏になろうとする「上人さま」に出会い、
「あなたはたくさんの者に守られていますよ。人間だけでなくたくさんの生き物にも・・・」
と教えられていた。

無謀にもただひとりで世界の重さを背負う行為に出た娘だったが、実際その重みに耐えられるはずはない。そもそも個人で世界の重さを背負う必要はないはずなのだ。しかし博愛の心を持つ娘に時代をつなぐものとして天啓は与えられた。故に王蟲は天啓の娘の魂を愛でてこそ大海嘯から守ったのだ。
ナウシカはなにものからか選ばれた「特別すぎた娘」なのである。
「特別すぎた娘」は愛されるべき立場である。
もちろんひとりの心優しき娘としての資質を愛されているに違いはないのだが、それ以上の人智を超えた触媒が「特別すぎた娘」を愛されるべきものに仕立て上げる。


腐海は大地の毒を吸収し結晶化して清浄にする。役目を終えると枯れて崩れていく。
腐海の秘密を探求する「森の人」セルムにナウシカが心の目を通して誘われた先は、腐海の尽きる向こうに広がる清浄化された美しき大地だった。故郷でひとり地道に研究した腐海の謎と秘密の予測は間違いではなかったのだ。
ナウシカは絶望の先の希望を見出す。
セルムは、共に腐海の秘密を守りながら大いなる腐海で静かに生きないかと求婚のように誘う。腐海に入ることはすなわち世を捨てることと同然である。人界を去ることは「虚無」に陥る原因となった博愛主義のジレンマをごく消極的に解決する方法である。
心の目を通して清らかな大地の存在を知り体感したナウシカは、甦ったばかりのそれを傷つけてはいけない、人類が自身の業である愚かさを知り、支配でなく共生できるようになるまで腐海の真実を心の糧とした上で秘密を守り、苦悩に満ちた人界で生きていくことを改めて決意する。
ナウシカは人間の愚かさを知ると同時に、人間が本来持つ感情の豊かさからもたらされる優しさを知っている。ナウシカの生まれ育った風の谷は辺境小国の暮らしのなかで民衆が貧しくとも心豊かに助け合い、喜びと苦難を分かち合い生きていることを自身の生い立ちから知っているからだ。トルメキアや土鬼の民衆もそう生きていって欲しいと心から願い、ナウシカは再び立ち上がるのである。

清浄化された大地の存在が、ナウシカの腐海との共生を謳う博愛主義を、人類の正道だと認める。果たして娘は己のジレンマを乗り越える。
ナウシカの復活は「特別すぎた娘」の降臨である。
大海嘯は治まり、人間の住める土地をますます減らした環境で如何に平安を得るか、ここから物語の方向性が変わる。


(続きます)





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ツモ

Author:ツモ
30代後半女。
→四十路突入。
→もうすぐバカボンのパパ越え。
→日本女性の平均寿命に向かって折り返し地点あたり。別にそこまで長く生きたいわけでもない。とりあえずの目標はこの先20年くらい。

暴れまわった娘時代の反動か、自宅にひきこもりがち。相方、娘二人と古都の端っこで地味に暮している。


気まぐれにしか更新しないくせに、記事がやたらと長くなる傾向にある。

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