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特別すぎた娘 その6

大海嘯が治まって戦線はすでに崩壊したにも関わらず争いに終わりは見えない。土鬼皇帝の立場にも皇弟と皇兄の権力争いが存在し、大海嘯の波とともに皇兄の破滅への狂気が表立つ。
人民の平安を願って善政を布いた皇弟ミラルパは、やがていつまでもまとまらない人心に落胆しついには絶望し恐怖政治を執るまでになった。絶望は憎悪を生み出し圧政と粛清を繰り返し、自覚もないまま「虚無」に囚われながらも権力にしがみついた。
皇兄ナムリスはすでに皇弟が挫折して狂気を孕んだ経緯を見ている。人間の欲と愚かさに底はない。己もまた然り。

「俺はもう生きあきた、何をやっても墓所の主のいうとうりにしかならん。あとはあの小娘がしょっていけばいい」

シュワの墓所で皇兄が何を見て何を知ったのか。何を宣告されたのか。
皇兄の狂気は自暴自棄である。なにかしらの因縁から解き放たれるために手段を選ばず刹那的に覇権を得、世を嘲笑う醜い快楽を享受せんばかりだ。皇弟ミラルパもまたその因縁の楔に心身を囚われ虚無に陥ったのではないか。聖都シュワになにがあるのか。読者にもなにもわからない。

「火の七日間にいたる時代、生命の源をあやつる技が存在したと古い伝承にある」
「神聖皇帝の墓所でもある大僧院の奥深く、その技が伝えられてきたとしか思えん」

腐海一の博識の剣士たるユパの言である。
シュワについて物語内でこれまでほとんど語られてこなかった。わずかな描写はあれど、シュワがなんであるのかがわからない。
聖都シュワ、これがここからのすべてのキーワードである。


クシャナは大海嘯に飲み込まれる寸前の自分が育てた軍の救済の代償として皇兄ナムリスに政略結婚の名の下に捕らえられていた。クシャナはますます混乱し疲弊する大海嘯の後の世の平定を模索しているが、これまで己が歩んできた血塗られた道からの楔から解放される術がわからない。大海嘯によって戦線は崩壊し事実上の停戦状態となっていたが、皇兄ナムリスは巨神兵をもってトルメキアに侵攻しようとしていた。クシャナは正道がなんたるか漠然と認識しながらも目前の愚行の渦に埋没していた。

ここで天啓の娘と狂乱の愚帝は対峙する。
ここでふたりのヒロインも再会する。


巨神兵を復活前に滅ぼそうとナウシカは攻撃するがただの攻撃では通用しない。わかっていての攻撃なのである。その方法しかない、と思っている。ここにナウシカの安直さが見える。しかしおそらく誰にも解決方法は導き出せない。旧世界のものはナウシカの時代の人間には手に余り負えない。科学技術は失われ時の彼方に消えてしまっていて生活レベルが退行している時代なのである。

ついに巨神兵は復活してしまった。
皇兄が言う。

「結局はお前も火を使うのか。火では巨神兵は焼けぬぞ。」
「その怪物をとじこめた袋をお前は燃やしてしまった。救世主面したお前が怪物を世に放してしまったのだ!」

映画版で以下のような場面がある。
クシャナ軍に占領された風の谷を取り戻すために民衆たちは碌な武器も持たないが結束し蜂起する。戦車を一台奪ったご老人たちが軍の反撃から民衆を守り退避させるために最前線に向かうも捕らえられてしまう。
民衆に降伏を説得するようご老人方に強いるクシャナに語る。

「あんたは火を使う。そりゃあわしらもちょびっとは使うがの」
「多すぎる火はなにも生みやせん。火は森を一日で灰にする。水と風は百年かけて森を育てるんじゃ」
「わしらは水と風の方がええ」


映画版の清らかなヒロインは水と風を愛した。
原作マンガ版の「特別すぎた娘」も心根は同じであろうが火を使う。攻撃的な一面がある。語りかけ説得することだけで解決と調停ができないのだ。選択する術が無いのは事実としても直感で遂行する面が目立つ。

ここで読者を驚かせる展開となる。
旧世界の破壊兵器たる巨人という巨神兵が復活の時にナウシカをママと呼ぶのだ。「秘石」を持つナウシカをママと呼び幼子のように懐いてしまうのである。
天啓は「特別すぎた娘」に怪物すら与えるのだ。
ナウシカは巨神兵を息子と呼ぶことで火を使った責務を一身に負いシュワへ連れ立つ。「火の七日間」の再現になってしまうかもしれない危険性を承知しつつ、シュワの封印は巨神兵の力をもってするしか方法がない、と直感する。天啓の娘に逡巡はない。

すべて諸悪の根源がシュワにある、とナウシカは結論付けている。
巨神兵復活の混乱に乗じてナムリス一派を討ったクシャナもシュワに漂う忌まわしさを見極めようとナウシカの後を追い始める。
ヒロインたちは破壊と破滅の淵に立ちながら最後の旅に向かう。


(続きます)



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ツモ

Author:ツモ
30代後半女。
→四十路突入。
→もうすぐバカボンのパパ越え。
→日本女性の平均寿命に向かって折り返し地点あたり。別にそこまで長く生きたいわけでもない。とりあえずの目標はこの先20年くらい。

暴れまわった娘時代の反動か、自宅にひきこもりがち。相方、娘二人と古都の端っこで地味に暮している。


気まぐれにしか更新しないくせに、記事がやたらと長くなる傾向にある。

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