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特別すぎた娘 その7

物語の終焉を迎える第7巻は、これまで読者が認識していたことを悉く裏切る。
唐突にそれまでの世界観を覆されるのだ。


ナウシカは巨神兵と共にシュワへ向かう道中で果たして恐ろしい真実を知った。
腐海と蟲、という人類にとって暴力的な生態系は、古の文明の終末期に世界の汚染を浄化する目的で人類の手で造り出されたものであり、汚染されつくした世界で毒の耐性を身に持って生きていけるように人間の肉体も他の生物も人為的に改造された。組成を変えられた生き物は清浄な世界では生きていくことができない、という。

物語の世界観を根底から覆すものである。腐海と蟲は人類の敵か否か、それらと人類に共生の道はあるのか、人類の平安とは、と物語のはじめから模索してきたものは、これをもって霧散するかのようである。
事実を知ったナウシカの衝撃は、読者も同様に感じる衝撃である。
汚染した大地を浄化するという腐海の役割そのものに問題があるわけではない。汚染に耐えうる身体に人類を造りかえたのも致し方なかったのかもしれない。改造された生命すべてが清浄な大気と大地に適合できないことが問題なのである。浄化が進んだ先に改造された人類の生きられる地はすべて失われるということなのだ。「世界浄化プロジェクト」と言えばとても聞こえが良いものであるが、旧世界の腐海を創生したものたちが世界と人類の行く先を如何しようと考えていたのか。

ナウシカはシュワへの道程、巨神兵を息子と呼びオーマという名を与える。
ナウシカの生きる時代、巨神兵は「火の七日間」を起こした人型兵器だと伝承されるばかりだった。しかし名を与えられた巨神兵は突如知能のレベルを上げ人格すら形成し、自らを「調停者」であり「裁定者」である、と宣言する。破壊兵器に知能の必要性はないはずなのだ。
シュワに数々の技を残した人々、巨神兵を生み出した人々、それぞれの意図がナウシカの時代に正式に伝承されていない。それらを残した人々が同一なのか否かすらわからないのだ。
世界が滅ぶかもしれない瀬戸際の人間がなにを考えなにを生み出し後の世に残したかったのか、それらがすべてナウシカの時代にはわからない遠い過去の意図である。
千年という時は相当の単位である。混乱の時を超え記録が失われるのも無理はない。しかも時代の変化いうのは常に混乱を招くものだ。どれだけの高度な科学技術を持つ人間にも時の流れに抵抗できる術は持てない。それは人智を超えた次元の世界である。千年前の計画が粛々と遂行され続けることは可能か。推定と予測は千年という長大な時の流れには無意味でないか。

土鬼皇帝は古の技の延命措置で怪しい長命を誇った。そして蟲と腐海の木を人工的に生み出す生命を操る技、さなぎだった巨神兵を育てる技、浄化プロジェクトの過程を生き永らえられるために作り変えたはずの人類をわざわざ破滅に追いやるような大海嘯を起こす技、それらが何故シュワから漏れ出ているのか。
世界全体に秘密裡に張り巡らされた旧世界の意図の鍵はシュワの墓所にある。


ナウシカが世界の忌まわしい真理に行き着こうとする時、クシャナはいまだ人界の因業に囚われていた。
戦乱と大海嘯にあまりに多くのものを失いすぎた生き残りの人間たちは途方にくれ悲哀と困惑から生まれた憤りを解消できず浅ましくも代償を求めようとしていた。
歩む道を正そうにも陰謀渦巻く醜い世界だけを歩み続けた己にもはや後戻りは不可能、とクシャナもまた諦めを抱いていた。
両者をユパの犠牲が調停したのだ。

「血は、血はむしろそなたを清めた・・・王道こそそなたにふさわしい・・・」

ユパのクシャナに対する遺言である。
ナウシカは天啓の娘として、腐海と人、世捨て人たる「森の人」、卑しいとされる「蟲使い」、トルメキア人、土鬼の民、それぞれを繋ぐ象徴といつしかなっていった。
クシャナは執政者として人民の平定と平安をもたらすことができるだろう資質を混乱の中で育てていった。
ヒロインたちは時代の申し子たる。


(続きます)



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ツモ

Author:ツモ
30代後半女。
→四十路突入。
→もうすぐバカボンのパパ越え。
→日本女性の平均寿命に向かって折り返し地点あたり。別にそこまで長く生きたいわけでもない。とりあえずの目標はこの先20年くらい。

暴れまわった娘時代の反動か、自宅にひきこもりがち。相方、娘二人と古都の端っこで地味に暮している。


気まぐれにしか更新しないくせに、記事がやたらと長くなる傾向にある。

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