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特別すぎた娘 その8

シュワにはトルメキア国のヴ王率いるトルメキア軍が先着して戦闘を展開していた。墓所を抱えて肥大化していた土鬼大僧会も「聖域」として中のことをまったく把握していない。墓所は大僧会の所属でなく大僧会が墓所の庇護の下にあるのだ。
こういった事実もすべて終盤でいきなり明かされるものである。
巨神兵も続けて単身で到着し、彼の言うところの調停と裁定に就く。調停とはすなわち停戦を指示することであり、裁定は破壊することである。
墓所と巨神兵は対峙し、互いに攻撃し合う。ここでそれぞれの出自を想像するに、旧世界の人類には滅びようとする世界を押し留めるために方法を模索したグループがいくつもあって意思は統一されてはいなかった、ということである。地球温暖化対策、二酸化炭素削減対策のための意思統一が図れない我々の世界と同様であろう。破綻に瀕してなお、旧世界には列強大国、数多の中小国それぞれに大義や思惑、意図があったであろうことは想像に難くない。
ついに火の七日間の再現に世界は晒された。


シュワのあらゆるすべてを巨神兵オーマは「裁定」し焼き尽くしたが、墓所は少しばかりの傷を負っただけで鎮座していた。ナウシカは蟲使いを伴い到着し、ヴ王と共に「墓所の主」と対峙する。


「なぜ真実を語らない、汚染した大地と生物をすべてとりかえる計画なのだと!!」
「お前が知と技をいくらかかえても世界をとりかえる朝には結局ドレイの手がいるからか!」


墓所は旧世界の技を小出しに漏らし、思惑を封じて鎮座する。墓所内には時の流れに寄り添うあらゆるものの変化と外的要因を許さない。計画を粛々と進めるために選民し墓所を守らせる。土鬼皇帝がそれに当たっていたというわけだ。改造した人間はいずれ計画上廃棄するだけのもので、計画過程における墓所の守人のストックにすぎないのだ。旧世界のもはや悪意である。「世界浄化プロジェクト」が根本であり絶対であるならば、選民の必要は何処にもない。墓所は明らかに選民している。汚染時代を生きる人間は墓所の駒というわけである。

墓所に保たれる計画すべてをナウシカは否定する。
どのような形であれ生まれた生命は、生かされているのでなく自らで生命を全うしているのだ。計画の駒などではない。汚染に適応した人間が今は清浄な世界で生きられないとしても、生命の誕生と死を繰り返した永い先に種の変化があるかもしれない。それは腐海も蟲も他の生物も同様である。「この星」では生命の誕生と死を繰り返し、種の繁栄と衰退を繰り返し、やがて変化を呼んできた。世界が浄化されるための永い時間の先になんの変化もないはずがない、というナウシカの希望的推測である。

墓所における「世界浄化プロジェクト」はすなわち「世界リセットプロジェクト」であり、プロジェクトの完成に複雑な感情を持つ人類は否定され、「おだやかでかしこい人間」となるはずの卵を保管している。光があるから影が生まれる。表裏一体なのだ。それを否定することは世の理を否定することで不遜だ。墓所の計画は人間の時に愚かで時に凶暴で時に優しい複雑な精神を受容しない。清浄化した大地に新しい生き物として牙を抜かれた種が蒔かれる計画なのだ。
つまり墓所は世界を「再建」ではなく「再創造」する支配者たらんとしている。


「絶望の時代に理想と使命感からお前がつくられたことは疑わない。その人達はなぜ気づかなかったのだろう、清浄と汚濁こそ生命だということに。苦しみや悲劇やおろかさは清浄な世界でもなくなりはしない。それは人間の一部だから・・・だからこそ苦界にあっても喜びやかがやきもまたあるのに」

ナウシカの言である。


「精神の偉大さは苦悩の深さによって決まるんです」


人界に生きる決意をした天啓の娘にとって、人間の業は美徳でもあるのだ。

墓所の主の言うところの、人間にもっとも大切なものが音楽と詩になった世界は理想的で桃源郷のようである。しかし「おだやかでかしこい人間」という本来の複雑な精神を持たなくなったものに、芸術を真に理解し愛す精神は宿るのだろうか。芸術は苦悩の末に生み出されるものが多い。複雑混沌とした人間の心が生み出すものなのだ。
「再建のための種を封じた庭」でナウシカは共に捕らわれたトルメキアの皇子たちが演奏する音楽によって、封印されようとしていた己の本来の、憎悪と悲哀、憐憫、優しさを同時に併せ持つ感情を取り戻した。
芸術とは覚醒させるものである。人間の一側面を削り取ることは歪で、芸術を解する心を削り取るのと同じでないだろうか。
墓所における「再創造」の計画に利己を見る。


(続きます)



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ツモ

Author:ツモ
30代後半女。
→四十路突入。
→もうすぐバカボンのパパ越え。
→日本女性の平均寿命に向かって折り返し地点あたり。別にそこまで長く生きたいわけでもない。とりあえずの目標はこの先20年くらい。

暴れまわった娘時代の反動か、自宅にひきこもりがち。相方、娘二人と古都の端っこで地味に暮している。


気まぐれにしか更新しないくせに、記事がやたらと長くなる傾向にある。

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