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マヤの挫折~「華やかな迷路」編について

北島マヤの才能は演技力のみに天才性を持つ。そのほかのあらゆることには鈍感で無知だ。中学生で親元を飛び出してひたすら芝居の勉強しかしなかったため、世の中のことがあまりわかっていない。
人は誰しも経験を元に社会的な良い側面も悪い側面も学ぶものだが、保護されている立場ならば逆境に晒された場合でも拠り所があるためそれを乗り切る猶予がないでもない。しかしマヤは身一つの立場である。未成年の少女が世の中を渡るのは当然ながら難しいし、マヤ自身にそういう器量がない。動物的な勘ともいえる逞しさを持ち合わせている反面、善良な第三者がそばにいない場合のマヤは周囲に流されるばかりだ。

師匠の月影千草もまた、後ろ盾がない状況下で自分が所有する演劇界幻の名作である『紅天女』の上演権を守り、後継者を育てるための孤独な闘いの最中にいるため、芝居の師匠としてはこの上ないのだが保護者として不十分な立場にある。むしろマヤを自分の生い立ちと同じような孤独な立場にあえて立たせ、自分で運を切り開かせようとする。母ライオンが子を強く雄雄しく育てるために崖の下に突き落とすが如く、の振る舞いだ。月影のマヤに対する教えの方向性は常にこれに一貫する。スパルタというよりは無茶・無謀。
もちろんマヤは主人公なのでこれらの困難を苦労を重ねつつ見事に乗り越えるんだけどね。それにしてもこのあたりの流れは読むに耐えないものがある。第8章「華やかな迷路」がそれに当たる。

この「華やかな迷路」編は北島マヤの芸能界でのアイドル女優としての活躍と、陰謀に巻き込まれ一転して失脚する話が展開される。この陰謀には母親、春の死が大きく関わっていて、マヤも全く上手く立ち回れずに翻弄され続けるだけなのが読むに耐えないのだ。

正体を隠してファンという立場で陰ながら「あしながおじさん」の如く、孤独で貧しいマヤの経済的援助から精神的援助までしてくれる「紫のバラのひと」は、実はマヤの所属する大都芸能の若き敏腕社長速水真澄なのだが、世の人々が彼を形容するに「仕事の鬼」であるとか「冷血漢」であるとかで、とにかく事業の成功のためにはどんな方法を用いても必ずや遣り遂げる、というように描かれている。マヤの初舞台を観たときから、なにも持たずなにも与えられず、ただ芝居への情熱だけを燃やす彼女に心惹かれたので「紫のバラのひと」として陰ながらマヤを支え続けてきたという一面を読者に見せてくれるのだが、それはマヤの一番の心の支えになっているのでそれはいいとして、やり手社長としての表向きの顔と腕前はどうしてもこの章では疑問に感じざるをえない。

(続きます。)
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いらっしゃいませ。

ツモ

Author:ツモ
30代後半女。
→四十路突入。
→もうすぐバカボンのパパ越え。
→日本女性の平均寿命に向かって折り返し地点あたり。別にそこまで長く生きたいわけでもない。とりあえずの目標はこの先20年くらい。

暴れまわった娘時代の反動か、自宅にひきこもりがち。相方、娘二人と古都の端っこで地味に暮している。


気まぐれにしか更新しないくせに、記事がやたらと長くなる傾向にある。

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