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神様を知らない

ワタシが観ていたアニメ『鉄腕アトム』は1980年放送の第2作である。

手塚治虫は言わずと知れたマンガの神様であるが、ワタシは直撃世代ではない。リアルタイムで読んだ作品は数えるほどで(『ドン・ドラキュラ』が好きだった)、神がお隠れになった後に代表作のいくつかを読んだ程度である。いくつか、とはいえ膨大な作品数だから代表作もそれはまた結構な数にのぼるから、もちろんなかなかの数を読んだことにはなるのだが。

だから「手塚治虫は神様の域にあるという」前提のもと読んでいるわけだ。
すべてに当てはまるわけではないにしろ、クラシック映画の大作なんかを観るときどうしても3割増しくらい素晴らしい作品という底上げした感覚を自然と持って観ていることは否めない。
これと同様の感覚でワタシが手塚作品に向き合ってしまっている可能性はかなりあると思う。もちろん素晴らしく面白く読んだけれども、直撃世代の読み手が当時に受けたであろう衝撃や感動とは次元がまるで違うだろうと思う。


さて、『PLUTO』である。
原作は『鉄腕アトム』の「地上最大のロボット」ということだが、ワタシはそれを知らない。だから純粋に浦沢直樹の作品として読んだ。

手塚世代でない読者にとっても、手塚治虫の絵は一目でわかるほどに確立されたものだ。絵を似せてしまったら、いくらストーリーを浦沢サイドが掘り下げて広げて再構築したところで、二次作品の域を超えられない。単行本の2巻掲載の手塚眞のあとがきを読むと「手塚治虫の絵に似せる必要は全くなく、自身の絵で描け」とけしかけた逸話があったらしく、さすがヴィジュアリスト、イカしたご遺族だぜ!と思ってしまった。


ストーリーがどういった風に再構築されているのか原作知らずなので全くわからないのだけれど、とりあえず『PLUTO』はのっけからとても物悲しく、SFミステリと謳ってはいるがドキドキするというより、なんだか始めから終わりまでずっと静かに悲しいストーリーだった。

ロボットには人間の細かな感情はわからないとされているのだが、登場する様々なロボットが皆彼らなりの感情を持っているのだ。ロボットが持たないはずの感情、悲しみや憎しみがストーリーの中に溢れていて、でもごく一部の人間しかそれを理解していない。ロボットは所詮ロボット、という偏見というよりは蔑んだ目をロボットたちは静観しているのだ。その均衡が崩れて事件が動く。

ロボットは所詮ロボット、という目しか持てないのは、モノは所詮モノという目しか持てない乱暴さと同じだと思う。もちろんモノがなにかしらの感情を持っているとは言い難いけれど、かといって粗末に扱っていいはずはないのだ。字が上手く書けないからといって鉛筆を折るのは大間違いなのだ。

人間に取って代わるほどの野望を持ってしまった人工知能を生み出したのも人間で、天馬博士の「我々科学者は、どの領域まで踏み込むことが・・・許されるのだろうね?」という言葉が恐ろしくも悲しい。つまりは人間の欲望や探究心が悲しみや憎しみを生み出すということか?

お茶の水博士がほとんど壊れて捨てられたロボット犬をなんとか修理しようとするエピソードがある。そのロボット犬がどこからどう見てもAIBOなのだ。あのAIBOが捨てられているなんて、とそれだけでワタシは本気で泣きそうになってしまった。お茶の水博士は懸命に修理するけれど、損傷が酷く部品を交換しようにも古すぎて手に入らず、結局直らない。最後までロボット犬として「人間と遊ぶ」という務めを果たそうとする姿に博士は涙を流す。

『PLUTO』はこんなエピソードがてんこ盛りなのだ。ロボットの使命と悲しみがこれでもかこれでもかと押し寄せて、それが人間の善意と傲慢、悲しみと憎しみをも浮き彫りにする。なんともやるせない気持ちにさせてくれるのだ。

浦沢作品として立派な出来に仕上がっていると思う。そしてその制作者に大きな感銘と衝撃を与えたという手塚作品の「地上最大のロボット」は如何なる作品だったのか。これだけで、手塚治虫というマンガ家の偉大さが若いマンガ読みの世代にも伝わるだろう。

もし神様がもっと長生きされていたら、現在のマンガ界はどういった様相を示しただろうか?





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ツモ

Author:ツモ
30代後半女。
→四十路突入。
→もうすぐバカボンのパパ越え。
→日本女性の平均寿命に向かって折り返し地点あたり。別にそこまで長く生きたいわけでもない。とりあえずの目標はこの先20年くらい。

暴れまわった娘時代の反動か、自宅にひきこもりがち。相方、娘二人と古都の端っこで地味に暮している。


気まぐれにしか更新しないくせに、記事がやたらと長くなる傾向にある。

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