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「悲しい」のその先

須藤真澄『長い長いさんぽ』は衝撃的だった。

氏の飼い猫ゆずとの生活を描いたエッセイマンガはそれまでに断続的に読んでいた。『ゆず』『ゆずとまま』などである。親バカっぷりが前面にあふれでていて、ゆずが愛らしくて、ほのぼのとおもしろおかしく描かれていて、ワタシはむはーっとネコのいる暮らしを二次元的に堪能させてもらっていた。

ある時本屋で『長い長いさんぽ』が平積みになっているのを見かけた。帯に「ゆずとの最後の日々」とあったので、ああ、とうとうゆずが死んでしまったのだな・・・と淋しい気持ちになった。しかしその淋しいはほんの少しの淋しいだ。そして現実感に乏しいものだ。ゆずはあくまでもエッセイマンガで知るだけのネコなのだ。ワタシのリアルなネコではないのだ。ゆずに対してではなく、ともに暮らし生業の題材の一部ともなっていた家族であるネコを失った作者の気持ちの方がどちらかといえばワタシにはよくわかる気がした。それはとても悲しい辛い別れだったであろう。購入し、自宅に戻って『長い長いさんぽ』を読んだ。それはワタシの想像を超えた作者の悲しみにあふれていた。

そこには、ゆずの病気に対する認識の甘さと死に際にそばにいなかった自分への後悔と嫌悪を狂気的にすら見える姿で当時の作者の様子が描かれていた。マンガエッセイなのでドキュメンタリのリアルな姿ではないにせよ、心情の根本に偽りはないと思う。他人から見れば気がふれたように見えるほどのゆずを失った悲しみである。


ゆずを失って悲嘆にくれる作者はものをまともに口にできないほどの状態だ。しかし立ち直るきっかけなんてどこに転がってるかわからない。
ある日の夕食の風景、ゆずが好きだったサバを焼く。
「ちゃんと食べてちゃんと生きよう。ちゃんと思おう。ゆず、サバ、うまいでサバ」
もっしもっしもっしガガガガと初完食、
と描かれた作者の立ち直りのきっかけはワタシの中でガツンと響き、義父が亡くなったあとにしっかり美味しく食べてこその追悼の意だ、とワシワシ食すように気合を入れた当時の相方とワタシの状態を思い出した。


しばらくして、作者があらたに仔猫を迎え入れたエピソードが続く。ワタシは安堵した。それは作者の心の健全な証だと思った。



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Comment

みやこ | URL | 2009.11.05 12:55
8月に14年間共に暮らしてきた一番の家族のネコを見送りました。じつは自分自身の喪失感やいろんな感情はまだ生々しいところがあってスッパリしてませんが(笑、いろんな周囲の人の力もあって、すぐにまた子猫が家族になり今暮らしています。
動物との暮らしは、ある程度の時期が来れば老いや死をおそれながらも、今を大切に大切にと毎日を過ごすことになって、また病気になれば自分を責め、みんな同じですねぇ。
須藤さんのゆずちゃんが亡くなったことは、純粋にさみしい気持ちになります。
忘れることも乗り越えることもできないけど、ちゃんとご飯を食べて、また新しき生活をはじめることは、ツモさんのいうように健全な心の証拠なんだな、とつくづく思いました。なんとなく少々不安に思うワタシの心もなんとか健全なのかなぁと思えました(笑
ツモ | URL | 2009.11.09 12:49
みやこさん、コメントありがとうございます。お返事遅れまして申し訳ないです。

亡くなったものを思い出すのに「悲しい」が先に立つ頃は、夢か現かわからないような喪失感に包まれた日々で、本当に辛いものです。「悲しい」は変わらないけど、静かな気持ちで思い出せるようになったら、それはそれで淋しさがちいさくちくりと刺すようで、見送ることの気持ちのあれこれはあまりに複雑です。
生きているものができることは、やはりちゃんと食べてちゃんと生きることしかないのではないでしょうか。
みやこさんも頑張ってご飯食べてください。その「美味しいよ」を亡くなったネコさんに伝えてあげてください。
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いらっしゃいませ。

ツモ

Author:ツモ
30代後半女。
→四十路突入。
→もうすぐバカボンのパパ越え。
→日本女性の平均寿命に向かって折り返し地点あたり。別にそこまで長く生きたいわけでもない。とりあえずの目標はこの先20年くらい。

暴れまわった娘時代の反動か、自宅にひきこもりがち。相方、娘二人と古都の端っこで地味に暮している。


気まぐれにしか更新しないくせに、記事がやたらと長くなる傾向にある。

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